Life is short!

シンガポール在住 4児の母の徒然ブログ

学びの場とリアリティの間

子らの学校生活を眺めていて、ずっとモヤモヤと思うことがあって、まとまってないですけど、徒然と記しておきたいと思います。それは「なぜ彼らの学びはこんなにリアリティに近いのだろう」ということ。

 

上の子たち(中高生)は、かわいそうなくらいいつも宿題・課題に追われていて、でも諦めたり投げたしたりせず、地味な努力を続けているのがすごいなあと感心しているのですが。彼らはいつも、タイムリーでリアルな問題についてリサーチしたりエッセイを書いたりしています。サステイナブルな街づくりとは。戦争・紛争がなぜ起こり、どうしたらなくせるのか。身近なところでは兄弟・家族間の確執やいざこざはなぜ起こるのか、解決方法はあるのか、などなど、実際に今、自分たちが直面している問題について考えているのです。そこにはもちろん「正解」はありません。考え続け、よりよい道を探し続ける、それしかないわけですが、リサーチをしながらそれを肌で感じているのです。このリアルさが、とてもいいなあと感じつつ、それって私が受けてきた教育と決定的に違う、でも何が違うんだろう、とモヤモヤが続いているわけです。

 

教科書がないから?

小中高、どこも、教科書が一切ありません。その時々のテーマのために、基本的にはオンラインで資料を引っ張ってきて「考え、ディスカッションし、エッセイやスピーチ、作品作りなどでアウトプット」する。中高生はテストも頻繁にありますが、多くはプリントで正解を問われ点数がつくテストではなく、エッセイを書く、スピーチをするという形で、「学んだことを踏まえて自分の考えをまとめる」力を先生は見ています。 

学校での学びの場と、実生活のリアリティとの間でその距離を遠ざけているのは、教科書の存在なのかも、というのが私の仮説。教科書には「正解」が書かれており、生徒は教科書に書いてある正解を学ぶ。テストで教科書の内容が習得できているかどうか試される。すると、学びが教科書の中で完結してしまい、実生活へのつながりがなくても済んでしまうのではないか。オンラインの資料には、そもそも覚えるべき「答え」がないし、テストもできない。タイムリーな社会的課題もあれば、遠くローマ時代の戦い方についての文献を探ることもある。求められるのは、「リサーチの方法、進め方を学ぶこと」「自分の生活とのつながりや違いを見つけること」「何を学んだか考えること」「学び方を学ぶこと」「その学びが自分にどう影響するか考えること」などで、いずれも、正解はないのです。

 

教科書にかかっているフィルター

学生だった頃、教科書の内容はなんの疑いもなく「正解」であり「真実」であると思っていました。というか、そんなの当たり前で意識したこともなかった。でも実際には、複数の出版社が教科書を発行しており、その内容は、特に社会科で顕著だと思いますが、その出版社の意図を反映しているわけです。その内容が適当かどうか文部科学省が選定し、その中からどの教科書を使うか決めるのは、公立校であれば各市町村だし、私立校であればその学校。それだけのフィルターを通った後生徒たちの手元に届く教科書は、「 唯一の知るべき真実」を語っていると言っていいのでしょうか。それは「いくつもの意図を反映した資料のひとつ」ではないでしょうか。そんな教科書選定の仕組みを私自身意識できたのもほんの2、3年前のこと。地元大田区立中学校で使用されている社会科の教科書の記述があまりにも偏っていることを問題視し、地元の有志でなんども勉強会を開き、複数の教科書を読み比べたことがあります。教科書選定が行われる前にはパブリックコメントをたくさん集め、教育委員会に提出。幸いその時は、問題視した教科書は採択されず、教科書選定について市民が声をあげれば影響を及ぼすことができることを実感できたのですが、これも一つのフィルターと言えばそうですよね。オンラインの資料だってもちろん、著者の意図を反映したものであり、唯一の真実とは言えないわけですが、指定された教科書ではない分、その他の資料を当たる自由があるし、どの資料を使うか「自分で考える余白」がそこにはあるのです。

もちろん、教科書を学ぶことの利点もあると思うし、その使い方を工夫されている先生方もたくさんいらっしゃると思います。ただ教科書と、その外に広がる実世界とのつながりが意識されないままになってしまうことが多いとしたら、残念だなあと思うわけです。

 Lifetime Learner

子ども達の学校が大事にしていることの一つに「Lifetime Learner になる」というのがあります。教科書のcontentsを学ぶのではなくて、how to learnを学ぶ。それによっていつでも、どこにいても、学び続けることができる、学びは学校の中だけでは終わらない、ってことですよね。その姿勢は、ぜひ子ども達に身につけてほしいなと思うし、大人になっても、親になっても、持ち続けていたいなと私自身思います。

 

ちょっと、本当に徒然(汗)、ただのモヤモヤのシェアでした。すみません。こんなそんなについて、実際に生徒さんたちに教えている先生方といろいろお話できたら嬉しいなあ。

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