Life is short!

シンガポール在住 4児の母の徒然ブログ

IBDPのCASでTEDxを企画運営

先日、長女と次男がこの3年間通ったIBカリキュラムのインター校で、TEDxイベントがあったので見に行ってきました。DP1年目、日本の高校2年生にあたる生徒達が、DPの必須課題の一つであるCASプログラムとして企画、運営、とのこと。おお、CASでTEDxをやるなんて、素晴らしいアイデアじゃないですか!

企画チームは5名、土曜日の午前中に学校のホールを会場に実施。約50名ほどの観客が集まっていました。学校のメーリングリストで生徒・保護者コミュニティに告知をし、自分たちで作成したウェブサイトに誘導。詳細情報の提供のほか、イベントチケット販売サイトにとべるようになっていて、チケットは、1ドル以上、任意の金額を寄付する形式でした。また、スポンサーも2社ついていました!(担当の先生の奥さんがやっているピラティススタジオと、学校と最寄駅間のシャトルバスを運営する会社)

 

スタート前の会場

TEDxとは

「広める価値のあるアイデア」を著名なスピーカーがプレゼンテーションするTED。実は私がワールドピースゲームに出会ったのも、TEDでジョン・ハンターがプレゼンするのをテレビで見て、でした。本当にいろいろなアイデアに触れられるTEDは、知的好奇心を大いに刺激され、すごく面白い!TEDxとは、そのスローガンとガイダンスのもと、地域の個人やグループが自発的に企画運営するイベントのことをいいます。

 

CASとは

Creativity Activity Service (創造性、活動、奉仕)の略で、IBDPの2年間で継続しておこなう課外活動のことです。創造性では音楽やアートなど、活動ではスポーツやイベント企画など、社会奉仕ではボランティア活動などが主に考えられますが、アイデア次第でいろいろなことができる、自由裁量度が高いプログラムです。

最終試験に向けて課題や勉強量が増えていく中で、それ以外の活動(CAS)にも時間を使わなくてはならないので、しっかりとプランして自分の時間を配分していく必要があります。また、やったら終わり、ではなく、リフレクション(振り返り)シートをスーパーバイザー(自校の先生)に提出し、それが評価につながっていきます。

因みに、CASは必須課題ですが、最終スコアには関係ありません。最終試験は自校ではなく外部評価でスコアがでますが、CASは自分の学校の先生が行う内部評価。内容を示したCASポートフォリオを作成し、活動の記録、リフレクションを行い、実施のエビデンスを残すことが求められます。

 

CASの進め方は、その人次第

CASでは、週に3時間程度の活動を行うことになっており、この時間の使い方は人それぞれ。今回のTEDxの企画運営チームは、週1、2回あるクラブ活動の時間を軸として企画を進め、学年末のイベント実施につなげたそうです。そうすることで、年間を通して一定の時間を割り振ることができるし、自分1人だけではなくクラブに集まってきたチームのみんなと協働しながら進めていけるのでいいですよね。DP生たちを保護者の立場から見ていると、あまり計画や意図がないままCASを時々やり、最後に時間が足りなくなってあわてて単発のイベント(ゴミ拾いとか)を企画したり、CASを通した自分の成長を記録するはずのリフレクションにあまり書くことがなくて苦しんだり、というケースも残念ながらあるようです。CASでなにをやるかは、自分の興味やアイデア次第で自由に決められるわけで、一定の時間を費やすからには、どうせなら自分が楽しめること、自分の成長に役立つこと、さらには社会に役立つことなど、しっかりと考えてプランできたら、有意義なCASになると思います。(そしてそれは大学受験の際の志望理由書でアピールしたり、就活の面接で熱く語れる、かも。。。?!)

 

テーマは「目に見えないもの」

今回企画チームが選んだこのテーマ、面白かった!目には見えないもの、でもそこに確実に存在し、わたしたちを形作っているもの。実はたくさんありますよね。例えば、自分の体の中で起こっていること、脳内で起こっていること。その人の経験してきたことや、それに伴う喜び、または痛み。それによって育まれた考え方やバイアス。ぱっと見ではわからない、隠れた才能や専門的スキルも。今回、7名のスピーカーがそれぞれの「目には見えないもの」についてお話ししてくれました。聞きながら、実は目に見えるものよりも見えないものの方が、個人に大きく影響を与えているのではないかー、など、自分の中にいろいろな感情が湧いてきました。

受付で配られたリーフレット

 

End FGC Singapore

その中でも衝撃だったのは、シンガポールにおけるFGC(Female Genital Cutting:女性器切開/切除)のお話。「アフリカなど一部の地域で行なわれているFGM(Female Genital Mutilation:女性器切除)は、女性を心身ともに傷つけ危険に晒す根絶すべき慣習」という認識は持っていましたが、ええっシンガポールで?!まさに、見たことも聞いたこともない情報でした。マレー系のイスラムコミュニティでは、今でも女の子が生まれると、まだ赤ちゃん・幼児のうちにFGCを行う慣習があり、シンガポール国内のいくつかのクリニックで実際に施術が行われているそうです。スピーカーは、自身も赤ちゃんの時にFGCをされていたことをティーンになってから知り、衝撃を受けて問題意識を持つようになり、後にシンガポールでのFGC根絶を目指すグループ、End FGC Singaporeの発起人の1人となったそうです。「昔からの慣習、儀式として行われているが、その事実でさえも知られていない。FGCには意味がないばかりか女性を危険に晒すことになる、ということも含めて認知、周知されることで、FGCがなくなることを願う」と話していました。実際「ある」けれども人の目に触れない、オープンな場にはでてこないトピックにスポットライトをあて、正しい情報が周知されることでよりよい、ヘルシーな社会を作りたい。そんな気持ちが伝わってきたプレゼンテーションでした。スピーカーも、このスピーカーを選出した高校2年生たちも、ガッツある!知ることって、本当に大事です。知らなければ、認識しなければ、そこに変化をもたらすことはできないんですから。

配布していた小冊子 「FGCにまつわる10の迷信」

まとめ

このTEDxを実施するにあたり、企画チームがいくつもの課題を乗り越えてきただろうことは想像に難くありません。TED本体との交渉、学校との交渉、テーマの選定、スピーカーのオーディション、ウェブサイトの作成、日程調整、印刷物やバナーの製作、チケット販売、告知、会場設営、などなどなど。。。大人でも成功裡に実施するのは簡単ではないプロジェクトだと思います。それをやり遂げたことで感じる自分自身の成長はとても大きかったはずだし、まさにCASの目的にかなった素晴らしい活動だったと思います。成功おめでとう!私もささやかながらチケット購入でサポートできて嬉しい。そして、「CASでTEDxを企画運営する」というのは、まさに「広める価値のあるアイデア」じゃないか!と思うのでした!

企画チームのメンバー。お疲れ様でした!

おまけ

お母さんを亡くした後の自分の心身の変化や苦しさを語った女性。子供の頃から腎不全や心臓疾患を抱え、生命の危機を何度も乗り越えてきた男性。この2人のスピーカーが共通して語ったことは、「苦難を乗り越えるのにジャーナル(日記)がとても有効だった」ということ。女性はそこから詩の創作をするようになり、男性は 'Strength in Adversity'(逆境における強さ)というタイトルの本を出版したそうです。

はっきりしないモヤモヤしたものが心の中にある時、自分の中では処理できないような強い感情を抱えている時、ジャーナル、書き出す、アウトプットする、これらが有効なこと、私も実感しています。なんでもいいからペンを持ってノートに書き出す(ここはアナログ派)、すると、気持ちが吐き出せてすっきりしたり、わからなかったことが整理されてはっきりしたり。それができると、元気がでるし、夜よく眠れるw。ネガティブばかりではなく、ポジティブもありで、なにか閃いた時、急にアウトプット欲求に駆られたりしますが、このブログも、ホントーに時々しか更新されないながら(汗)、アウトプット先としてとても有難い存在です。読んでいただき、ありがとうございます。

 

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2人目のIBDP修了(直前)

長男がIBDPを終えたのが2021年5月。あっという間に月日は経ち、この5月には長女がIBDP修了予定となりました!早っ!4人の子育てをしていると、4人それぞれの個性が違いすぎて面白かったり大変だったりいろいろなんですがw、DPへの向き合い方も、長男と長女では全く違うものでした。

昨年8月からDP2年目がスタートし、今は2週間の春休み中。休みが終わると学校に行く日はもう数えるほどしかなく、スタディリーブ(試験勉強用の休み)となります。そしていよいよ4月末から5月中旬にかけて、最終試験が行われます。

DP2年目はけっこう追い詰められた雰囲気が続いていた長男とは対照的に、長女はそれまでとあまり変わらない様子で、所々友人と遊んだりゲームしたり、気分転換を上手に入れながら自分のペースを作っていたように思います。もちろん、ずっと全てが順調だったわけではなく、壁に当たってもがいたり、周りのサポートを受ける必要がでてきたりなど試練はありましたが、投げ出すことなく前進し続けることができました。現在、最終試験まで約1ヶ月、学校でやるべきシラバスもほぼ終了し、あとは自分で準備して試験に臨むばかり。実は少しガス欠というか、集中できずにスランプ状態です。春休みで従兄弟が遊びにきたりしていたせいで気が散っているのもあり。ここで少し息抜きをして、気分を切り替えられるといいのですが!

 

その長女に、DPについて聞いてみました。

 

DPをやり遂げるために、大切なことは

「時間の管理。」これは、長男も言ってました。DPは大変、DPは難しい、と巷で言われますが、勉強する内容は、それまでの延長であり、いきなりレベルが上がって難解なことをやるわけではありません。ただ、6科目に加えてTOK(知の理論)、EE(課題論文)、CAS(創造・活動・奉仕)にも長期間にわたってコミットしなければならず、都度都度の締切に合わせて課題をこなすために、自分の時間をどう使うかというマネージメント力は必須です。逆に言えば、時間の管理をうまくできれば、2年間を通じて、極端に苦しむことなく進んでいけるということかもしれません。もう一つ長女があげたのは「コツコツ続ける粘り強さ。」時間管理とも通じると思いますが、2年の間、少しずつ確実に積み上げていくことが必要で、そのためのアカデミック・スタミナが求められる、とのことでした。

 

DPで一番難しかったことは

2年間のうち一番苦しんだのは、「IAのテーマ決め」という返事でした。IAとは、Internal Assessment(校内内部評価)のことで、自分の学校の先生が評価し成績をだす試験課題のことです(DPの最終試験の評価は外部のIB試験官が行います)。IAの成績は最終評価の20%を占め、ここでいい成績を取っておくことも大事です。各教科で、プレゼンテーション、実験、プロジェクトの実施とレポートなど、様々な形が取られますが、実施する時期や課題は、各学校やシラバスの進行状況などによってもかなり異なるようです。課題の中で、何をテーマにするか、ということが長女には悩みどころだったようで、自由度が高い分、ずいぶん迷い、先生との相談を重ねてやっと決めた、ということでした。その分、テーマが決まった後は集中して取り組めたようです。具体的なテーマをご紹介すると、

数学:「トマトソースジャー(瓶)の容積と価格の関係」

実際にスーパーで瓶入りのトマトソースをいくつかのブランドで買い、瓶を計測。曲線だったり凸凹だったりする瓶の計測に必要な計算式を全て表し、導き出したそれぞれの容積と価格の関係をグラフにして分析、結論をだす、というレポート。13ページに及ぶ成果物は、見せてもらいましたが、何を言っているのか何をどう計算しているのか、私にはさっぱりわかりませんでした笑。

歴史:「日本において大正デモクラシーの不完全さが、どれほどその後の軍部の力の拡大に影響したか」

たくさんの資料を読み込んでからの、3部構成のエッセイ。まずはOPCVL*(資料の分析)、次にエッセイ本文でテーマについての考察、最後にリフレクション、というもの。長女はEE(課題論文)でも日本の歴史からテーマを選んでいますが、このIAのテーマは何度も変更したりしてなかなか決まらず、苦心したようです。

*Origin,Purpose,Content,Value,Limitation

 

DPをやって良かったと思うことは

「面白かったのは、教科横断の学びが実感できたこと」、だそうです。これはDPに限らず、IBカリキュラム全般に言えると思いますが、一つの教科の中だけで終わらない学びが重要視されています。長女のDP選択科目は、日本語A(セルフトート*SL)、英語B(HL)、歴史(HL)、地理(HL)、数学(SL)、生物(SL)ですが、数学で学んだことが生物で実感できたり、歴史で学んだことが地理の理解に役に立ったり、ということが多くあったそうです。教科同士のつながり、それがさらには学びと実生活とのつながりとなって、生涯学習者としての力になっていくんだと感じました。DPを修了することの利点はたくさんあると思いますが、大学進学など直接的に目に見えるメリットではなく、教科横断の学びが面白かった、と言うところが、長女が中高6年間IBカリキュラムで学んできたことの成果のひとつ、なのかもしれません。

因みに、DPの前のMYP(6年生から10年生)でも、IDU (Inter-Disciplinary-Unit 教科横断ユニット)が頻繁に行われ、例えば数学と社会の先生がコラボして課題を設定し、一緒に評価する、ということが行われています。

*セルフトートとは:長女の学校にはDPの日本語の先生がいないため、Self-taughtという形が取られています。さまざまな国出身の生徒達が母国語を勉強するMother-tongue(マザータン)のクラスの先生がコーディネーターとなり、外部のチューターと共に学習を進めるスタイルです。この場合、HL(ハイヤーレベル)はとれないのでSL(スタンダードレベル)となります。

 

大学選びについて

結論から言うと、長女は、引き続き英語で授業が受けられる日本の大学数校を受験することに決め、既に、第一志望としていた大学に条件付き合格しています(IBDPの最終スコアがでてから本合格となります)。最初は、イギリス、ドイツ、オランダなど海外の大学も視野にいれていましたが、コロナの影響の見通しがまだ不透明だったことや、主にアメリカですが銃の乱射事件が立て続けに起きていた時期だったことなど、どちらかというと海外での生活への不安から、優先順位は下がっていきました。また、留学生の学費は年間で500〜600万円(プラス寮費などの生活費)となる大学も多く、はっきり言って目玉が飛び出るほど高額!いろんな意味で親子共々相当の覚悟が必要になります。。。もちろん、本人が勉強したいことが勉強できる大学を選ぶ、というのが第一で、長女の場合はそれが日本の大学だった、ということになりました。

海外の大学で学びたかったら、一旦日本の大学に進み、在学中に提携校に留学すると言う手もあります。実際、長男は日本の大学に進学しましたが、3年生となる今年は、1年間留学するための校内選考を通過し、今手続きを進めているようです。また、5年間で修士まで取れるプログラムもある大学もあって、自分が勉強・研究したいコースがあるならば、日本の大学はかなりお得感がある気がします。(出資者である親としては切実な問題です!)

条件付き合格についてですが、IBDPの最終スコアは、高校卒業後、7月にならないとでないので、大学に出願する時には、学校がだすPredicted Grade (見込み点)を提出します。大学は、この見込み点をもって仮合格とし、本合格の条件として最終スコア〇〇点以上、という基準を示します。因みに、長女が仮合格した大学は、出願者の見込み点平均は45点満点中37−38点(ウェブサイトより)で、本合格の条件は最終スコア30点以上、とのことでした。それほどスコアを落とすには、最終試験で白紙で提出するとか、よっぽど大幅にズッコケたことをやらなければないと思うので、条件付きとはいえ、普通にやれば本合格できる、と考えていいと思います。

 

そろそろ最終試験へのカウントダウンが始まります。この2年間で積み上げてきた、自分の力を出し切れますように!無事に試験が終われば、約1週間後には卒業式!今年は3年ぶりに大きなホールを借りての式ができるそうです。式の翌日はプロム!これも3年ぶりに復活。そしてその後は、仲良し5人組でプランしている卒業旅行!と、楽しいイベントが目白押しなんです。今だからできる、今しかできない、いろんな経験を積んで、さらに成長していってくれることを願うばかりです。

 

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ミュージアム制覇ミッション続き(2)

ミュージアムを制覇しよう!という目標を立てると、夏休みがちょっと楽しくなりました。さらに、このささやかなブログに記録しておこうと思ったら、それが意外と楽しくなっちゃいました!どんな写真を撮ろうか考えたり、訪問後に改めてウェブサイトを見てみて、新しい発見があったり。夏休みの自由研究状態?!子供の頃は「やらされていた」けれど、自分で興味持ってやるとこんなに充実して楽しいんだー!と、遅まきながら、改めて、感じた次第です。。。

 

#6 Trick Eye Museum

Trick Eye Museum - Attractions in Singapore - Resorts World Sentosa

入場大人25ドル子供20ドル オンライン割引あり

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前回まで戦争関連の展示見学が続いたので、ちょっと気分を変えてこちらへ。ユニバーサルスタジオや水族館、カジノなど、観光用のアトラクションがひしめくセントーサ 島の一角にあります。

 

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いろいろと写真を撮ってなかなか笑えました。家族投票の結果、本日のベストフォトはケイバ・ヒデキ。いい写真のコツは、撮影用の設定ではなくて、本人の演技力である、というところに落ち着きましたw

 

#7 Asian Civilisations Museum 

Life in Edo / Russel Wong in Kyoto exhibition ~17 Oct. 2021

https://www.nhb.gov.sg/acm/

入館大人20ドル 学生15ドル (家族パッケージで5人60ドルでした)

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シンガポールリバー沿いにある美しい博物館

これまで何度か訪れたことがあるアジア文明博物館。広い「アジア」地域に混在するたくさんの文化や宗教を、テーマ別に複数のギャラリーで紹介しています。今回は、春からやっている展示「Life in Edo / Russel Wong in Kyoto」を目当てにやってきました。江戸の行事や生活風景の浮世絵と、シンガポールのカメラマン、ラッセル・ウォン氏が撮った京都の風景、芸妓さんの日常などの写真が一緒に展示されています。

 

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北斎の「凱風快晴」

世界で最も知られている浮世絵のひとつ、赤富士。江戸時代にフルカラー印刷を実現するために使われた複数の木版も一緒に展示されていました。北斎が下絵を書き、彫り師が木版を何枚も彫り、刷り師が色別に刷り、という気の長い共同作業の様子が蘇ってくるようです。

 

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江戸時代の生活の様子を色鮮やかに見せてくれる浮世絵で、私が特に注目するのは人々がまとっている「着物」の柄や着こなし!艶やかだったり粋だったり、どれだけ見ても飽きることがありません。一緒に展示されている現代の京都の写真は全て白黒で、200年以上前の江戸の色鮮やかさとのコントラストが面白かったです。コントラストと言えば、同行した次女は「会場の壁の色(写真)が素敵だった」とのこと。確かに、日本の伝統色かな?ニュアンスのある色彩が、薄暗い室内に映えていました。作品を光から守るために照明は暗め、さらに展示期間前半と後半で作品の総入れ替えも行われたそうです。アート保存のために、エキシビションの裏では様々な努力がはらわれているんですね。感謝!

 

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今回は常設展示はさらっと見ただけでしたが、前回は改装中で見られなかった「ファッションとテキスタイル」がオープンしていました。アジアで育まれた生地や染め織り、衣類が、貿易が盛んになるにつれて世界の影響を受けて技術やトレンドが変化していく様子がわかります。(いい写真がとれてなくて残念!)それから、横を通りかかる度にいつもクスッとわらってしまうこの猪?の頭部とお皿。この頭は、上部をパカっと開けてスープなどをいれる深皿で、蓋を閉めると鼻から湯気が出てくる趣向!だそうですww  貿易を通じて異文化がお互いを刺激しあった時代の、中国文化と洋食器のミックス?!このような動物(鳥や魚、猪など)の形の深皿は、最初1750年頃フランスで作られ、その後ヨーロッパ市場に輸出するために中国で盛んに作られたそうです。

 

1Fは貿易、2Fは信仰、3Fは素材とデザインを大きなテーマとしており、「アジア」という言葉が示す幅の広さを感じるミュージアムです。

 

#8 The Live Turtle & Tortoise Museum

Museum | The Live Turtle and Tortoise Museum of Singapore | Singapore

入場大人14ドル 子供(3−6歳)10ドル

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北部にあるレクリエーション施設ORTOに隣接

「生きてる」カメとリクガメ博物館、という名前。博物館でカメ、というと剥製のイメージになっちゃうので、わざわざ「Live」としてるのかな。英語でカメ全般のことをTurtle タートルと言いますが、陸に住んでいて泳げない陸ガメのことはTortoise トータスと言い分けます。水中のカメとリクガメは、住むところも食べるものも全然違うんですね。

 

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リクガメ大きい!みんなハラペコでしたw

入場時にエサのロングビーン(ながーいインゲン!)をもらって、リクガメたちにエサやりができます。そんなに大きい敷地ではないんですが、全部で30種類以上のカメさんがいるそうです。

 

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くるっと回っておしまい、ではありましたが、同行した次男とお友達はハラペコのカメたちがエサに集まってくるのを楽しんでました。

 

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水中に住むカメたちは、一匹ずつ水槽に。それぞれの顔は、こんなにユニークでひょうきんでしたー!

場所は街中から車で30分くらい北上したところ(シンガポールの感覚では、ちょっと遠いところという感じ)。魚釣りやエビ釣りなどが楽しめるORTOというレクリエーション施設の隣にあります。カメのエサやりの後は、エビ釣りを楽しんで(2時間も!釣果は2人で8匹〜w)帰宅しました。

 

#9 NUS Lee Kong Chian Natural History Museum

https://lkcnhm.nus.edu.sg/

入館大人21ドル 学生13ドル

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リー・コンチェン自然史博物館

主に東南アジアの自然史を紹介しているミュージアム。シンガポール国立大学(NUS:2021年のアジアの大学ランキング3位!)のキャンパス内にあります。

 

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中央に草食恐竜の化石が3体!

 

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でっかい恐竜の化石からちっさな貝の標本まで、あらゆるサイズ、色、形の標本や化石、剥製などなどが15のテーマ別ゾーンに展示されています。

 

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頭の大きな骨格標本は、マッコウクジラ。2015年にシンガポールの島に死んだ状態で打ち上がったものだそうです。わーお。体長10.6m。

 

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Black Marlin 和名は「シロ」カジキだって!

そしてこちらは、1986年にシンガポールのイーストコーストパークの浅瀬に迷い込んで息絶えてしまったシロカジキ。体長3.3m 体重245kg。なんでブラック・マーリンなのにシロカジキになるのー?!ネット情報によりますと、英語では生きてる時の背中の色の濃い藍色を指してブラック・マーリン、日本では死んだ後その色が白っぽく変色していくのを指してシロカジキ、と呼ぶんだそうです。。。なるほど。

 

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螺旋階段を上がると、ヘリテージギャラリーとして、1800年代以降のシンガポールの動植物に特化した展示があります。昔のラッフルズミュージアム(今の国立図書館)にあったものの展示が多いそうで、今回のミュージアム巡りの最初に見た図書館での展示と似ていました。ので、写真はあまり撮らなかったんですが、私の好きな蓮の花のきれいな植物画があったので思わずパチリ。1819年にイギリス東インド会社(歴史の授業で習った!)で働いていたスタンフォード・ラッフルズがシンガポールに上陸し、自由貿易港を開港して以来、貿易の中心地となるにつれて、様々な外来種が輸入品として、または荷物に紛れて、シンガポールにやってきました。蓮の花もそのひとつで、観賞用に輸入されてから、国中の貯水池を覆い尽くしてしまうほど繁殖していたこともあるそうです。

 

この自然史博物館、いろいろ網羅しているために、総花的というか、最終的に印象に残るものはあまりないかも。。。なにか目当てをもって訪れた方がいいかもですね。貝愛好家(食べる方じゃなくて、貝殻鑑賞ー)の私?としては、宝貝コレクションが素敵でしたー!

 

#10 Singapore Musical Box Museum

Singapore Musical Box Museum

入場 大人12ドル 学生6ドル

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敷地の奥にオルゴール博物館の入り口が

シンガポール・オルゴール博物館は、国内で最も歴史の古いお寺、シアン・ホッケン寺院の敷地内にあります。スイスやドイツ、アメリカなどから集められたオルゴールは、200年以上前に作られたアンティークもあり、貴重で繊細なオルゴールがたくさん展示してあるため、見学は要予約のガイドツアーのみです。

 

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美しい音を作り出す、シリンダーいろいろ

オルゴールの中で音を出す仕掛けはこのシリンダー。初期のオルゴールは真鍮など金属のシリンダーが使われており、高価なものでしたが、木製のシリンダーが作られるようになったり、シリンダーの交換ができるように工夫されていったことで価格が下がり、一般の人々も楽しめるようになったそうです。そもそも、時計に音が鳴る機能がつき、音楽が鳴るようになり、そこから時計の機能をとっぱらったものがオルゴールの原型で、スイスの時計職人が最初に作って1796年にパテントが取られたそうです。時計職人の技術から生み出されたんですね!

 

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これはディスク型

オルゴールはシリンダー型、そしてディスク型、パンチカード型の3種類。このディスクは、レコードやCDの原型だそうで、確かによく似ていて、納得ですね。18世紀当時、音楽といえば音楽家の「生演奏」しかなかった時代に、再生可能な音楽プレーヤーとして初めて登場したのがオルゴール!オルゴールというとレトロで懐かしいイメージですが、当時としては最先端のイノベーションだった、ってことですね〜。

 

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大型のこちらはジュークボックスの原型

ジュークボックス、という言葉自体ずいぶんレトロな感じもしますが、この大きな縦型のオルゴールはまさにジュークボックスの原型。コインをいれると音楽が鳴り出します。後々、音楽を選べるボタンがついたりして(押すと中でディスクが入れ替わります)、音色は優雅だけど、まさに自動音楽演奏装置。当時、上流階級の皆さんが楽しんだ船旅でこれが大人気となり、一番儲かるエンターテイメントだったとか。

 

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シンガポールでも作られました

時計やオルゴールといえば、スイスやヨーロッパでしょ、なんでシンガポール?その秘密は、自由貿易港として繁栄し、ヨーロッパとの間でたくさんの品々が輸出入されていたことにあるそうです。当時ヨーロッパから船で運ばれてきた時計やオルゴールは、精密機器ゆえ、その輸送中にダメージを受けて動かなくってしまったのです。そこで、完成品ではなく、パーツごとバラバラに輸入し、当地で組み立てて商品にする、という方法が考え出されました。シンガポール国内で組み立て作業をする職人が育成され、精密機器産業として発展したそうです。(後に日本の時計メーカー「セイコー」が初めての海外製造拠点としてシンガポールを選んだのも、そういう土壌があってのことだそうです。)アジア文明博物館でも、西洋文化と中国文化の混ざり合いを感じましたが、ここでも。写真の置き時計は、ムーブメントはヨーロッパからきた部品ですが、外側の装飾は完全に中国嗜好。「福」という漢字や、中国の吉祥模様であるコウモリが彫り出されています。

 

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入場チケット。日本の音大生と一緒に作っているそうです!

この博物館で入場料を払うともらえるチケットは楽しいですよー。1枚1枚デザインが違っていて、穴があいている。。。そう、オルゴールのパンチカードなのです!ツアーの最後に、手回しのオルゴールに差し込み、回してみると、素朴な音色が〜。私たちがいただいたのは、シンガポール国家、建国記念日のテーマソング、三匹の子豚、でした。いい記念!オルゴール本体も欲しくなっちゃいますね。

 

ガイドをして下さったのは、日本人で館長をされている南さんでした。過去から受け継がれてきたオルゴールを、未来へ受け継いでいかなければ!という熱い語り口に、オルゴール愛を感じました。ありがとうございました!

 

#11 Malay Heritage Centre

WELCOME TO THE MALAY HERITAGE CENTRE

入館 大人8ドル 学生5ドル

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元々はマレーの王族の住居だったという美しい建物とガーデン

元はと言えば、マレーシアの一部だったシンガポール。国歌はマレー語だし。もともとのマレー文化の中に、移民してきた中国や宗主国だったイギリスの文化などをミックスしたものがシンガポールカルチャー。公用語は英語、中国語、マレー語、タミール語の4つ。シンガポリアンの話す英語は「シングリッシュ」と言われ、英語・中国の福建語・マレー語のミックスで、難解!シングリッシュ対英語の分厚い辞書もあるほどです。というわけで?!こちらはマレー文化・伝統を紹介しているマレー・ヘリテージセンター。

 

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文化紹介のミュージアムでいつも私が気になるのは、こんな庶民の生活が見えてくるような日用品。アジアでは、かごだったりざるだったり、すり鉢だったり、なんとなく昔遊びにいったおばあちゃんちの台所を思い出すようなアイテムも多いですねー。

 

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ラッフルズ卿が上陸した頃のシンガポールは、人口1000人程の小さな漁村があるだけの島だったそう。当時マレー半島と周辺諸島では、写真のような様々な形の小型の船を操っての漁業やインドネシアなどとの貿易が行われていたそうです。

 

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お隣にはサルタンモスク

その後自由貿易港として発展していくと、西洋や中東との貿易だけではなく、聖地巡礼の出発地としても栄えていきました。マレー文化ではイスラム教が主な宗教であり、その聖地であるアラビア半島のメッカへの船旅が大人気となり、東南アジアの熱心なイスラム教徒が巡礼の旅を目指して集まってきたんですね。旅を斡旋する業者(今で言う旅行代理店ですね)が活躍していたとか。いまこのセンターやモスクがある地域は、当時は海岸沿いで、港町として貿易商や旅行者、巡礼者などで賑わっていたそうです。

 

ラッフルズ卿が行った地区分けで、マレー系アラブ系などの住民に割り当てられたこの地域はカンポン・グラムと呼ばれ、今でもその名前で親しまれています。旅行者が行き交う港町らしく、中東や地中海料理などのレストランや、カーペットや織物、雑貨小物などのお店が立ち並び、エスニックな雰囲気がする地域です。

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長かった夏休みもようやく終わり、ミュージアム制覇ミッションも一旦終わりです。

今回リストアップした35カ所中、しっかり見られたのは11カ所。まあまあかな!?

改装中などで閉館していたのが5カ所、以前行ったことがある(でもまた行こうと思っていた)のが6カ所。まだ足を踏み入れたことがないミュージアム、残り13!これからも週末など利用して、全部制覇したい!このミュージアム巡りで良かったのは、やっぱり子ども達と一緒に行けたこと。それぞれの反応、感想が様々で、帰り道のわちゃわちゃおしゃべりが楽しかった!なにより、一緒に博物館巡りを楽しめるほど、大きくなったんだなあー、と1人感動しておりましたとさ。おしまい。

この夏のミッション!シンガポール中のミュージアム制覇!(1)

国土の小さいシンガポール(東京23区分とほぼ同等)では、シンガポリアンも外国人も、長いお休みのお楽しみは海外旅行!アジア諸国はもちろんのこと、南半球やアフリカ、ヨーロッパなどなど、世界のあちこちに行く人がたくさんいますが、それもこの2年はコロナ禍でお預け状態。早く海外に自由に遊びに出たいねー!という会話があちらこちらで聞こえてきます。

我が家も、楽しみにしていた一時帰国ができないため、子ども達と決めたこの夏のミッションは「シンガポール中の美術館、博物館、展示など全て制覇!」有名どころは時々行っていたものの、まだまだ行っていないミュージアムはたくさんあります。常設展示、特別展示、大きいところ小さいところ、様々数えてみたら30以上!これはほぼ毎日行かないと制覇できない!!

 

以下、行ってみたミュージアム備忘録、時系列です。ご興味ありましたらご参考まで!

#1 Nature X Human Exhibition/Environmental Histories of Singapore

Human x Nature: Environmental Histories of Singapore

@National Library/ ~26 Sep 2021 / 入場無料

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まず最初に行ったのは、ちょっと地味ですが国立図書館内のギャラリーでの展示。「シンガポールの歴史の中での自然環境の変化と人々との関わり」、といったところですかね。無料だし、図書館のギャラリーだからそんな大したことないよね、きっとー、なんて失礼なこと言いながら行ってみたら、とんでもない!めちゃ充実で楽しめました!さすが国立図書館、大切に保管されてきた様々な文献、図鑑、動植物の水彩画、剥製などの資料を多数展示。もともとは熱帯気候のジャングルに豊かな生態系が育まれていた場所がイギリスの植民地になり、世界の需要に答えてプランテーションが広がり、ゴムやスパイスの生産地、主要貿易港として栄えていく様子。それまで欧米に知られていなかったエキゾチックな動物や鳥などがヨーロッパで人気となり乱獲されるように。密猟や森林伐採によって地域特有の動植物の姿が消えていく様子。1800年代当時この地域に生息していたマレートラは、森林の減少と人口増加によって人と遭遇することが増え、人が犠牲になったりしたことから文字通り「トラ狩り」が行われ、懸賞金もだされたそうです。1930年に野生のトラが殺処分されたのを最後に、シンガポールからトラの姿は消えました(トラの剥製の展示あり)。環境・生態系破壊や環境汚染などが問題となった時期もあったものの、独立してからは、都市計画によって緑豊かな「ガーデンシティ」を目指し、植樹運動が奨励されるなどして、今のシンガポールには、美しい緑や自然、豊かな生態系も戻ってきています。。。というようなストーリー、でした。

ちょっと心に残ったのは、「日本の占領下で」という展示の一角で見た一文。「占領下では、もちろん図書館も博物館も植物園も日本軍が管理したが、地域の動植物に関する資料や水彩画に関しては「こういった資料は人民にとって貴重なものだから大切に保全するように」という東條英機の命令により保全されることになった」とのこと。果たして東條英機がそういうセンスを持った人物だったかどうかは???ですが、真偽のほどはともかく、19世紀から今に受け継がれている貴重な資料たちが、戦争で失われることがなくて良かった。。。と思いました。

 

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10階のギャラリーに上がるエレベーター内

ギャラリー内は写真撮影禁止だったのですが、10階に上がるエレベーターはこんな!私的にはツボでした。。!

 

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国立図書館発行のフリーマガジン

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そして、ぜひご紹介したいのは、ナショナルライブラリーが発行しているフリーマガジン、biblioasia! これ、めっちゃ充実していて読み応えあり!シンガポールを始めアジア諸国の文化や歴史が紹介されていて面白いんです!今回はこの特別展示会に合わせてNature特集、スミからスミまで読み込んじゃいました。加えて良質な紙に美しい印刷、これがシンガポールでタダなんて、感涙もの〜!食堂でお水もらっても有料なのに〜。オススメです!

 

#2 Red Dot Design Museum

Red Dot Design Museum Singapore

入館料:7歳以上@10ドル(入館料10ドル払うと10ドルバウチャーがもらえる!)

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マリーナベイの端っこにあって、ずっと気になっていたミュージアム。コロナ規制でしばらくお休みしていましたが、今は開館しています。世界最大級のデザイン賞であるRed Dot Design Awardで認められたグッドデザインプロダクトを集めて展示したミュージアムです。

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内装や照明もオサレ

割とこじんまりしていて、展示も2階のワンフロアだけですが、建物そのもののデザイン、内装、照明まで、さすがのこだわり、という感じでした。

 

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それぞれのベストデザイン賞

各々一番いいと思うデザインを選んでみたら写真の通り、全員バラバラでしたー。

長女:オフィス用快適イス

次女:透明アクリルのおしゃれライト

次男:コーヒーメーカー(最近父母にコーヒーをいれるのが流行っているため?)

私:折り紙構造の緊急避難シェルター

 

シンプルなデザイン(ストアには日本のメーカーのグッズもたくさんありました)、それから機能とデザインがうまくマッチしているものがグッドデザインなんだなー、という印象でした。

 

このミュージアム、入館料を一人10ドル払うと、1Fのストアとカフェで使える10ドルバウチャーがもらえます。ん??なんで?実質タダってこと?お金をぐるっと回してるだけ?と思いましたが、なんとなく得した気分でカフェでお茶を楽しみました!実はその仕組みがベストデザインなのでは?!と思った次第ですww

 

#3 Orient Express Exhibition 

The Orient Express Exhibition – Orient Express Exibition

@Gardens by the Bay/~12 Sept. 2021/入場料25ドル

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「オリエント急行」の実物車両展示

「オリエント急行殺人事件」で有名なヨーロッパの豪華寝台列車オリエント急行の実物車両展示。車両内にも入れて、当時の様子が再現されていたりして雰囲気満点でした。

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車内の装飾、テーブルの再現

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パリからトルコ、その先エジプト・カイロまでも!

以前から、なんでヨーロッパを走る列車が「オリエント(東方)」って名前なんだろうと不思議に思っていたのですが、パリから中近東のトルコ・イスタンブールまで行けるようになったことでオリエント!当時の上流階級の皆さんはこれに乗って1週間かけてトルコに行き異文化を楽しんだ、ということなんですね。

寝台列車での長旅で楽しみなのは食堂車ですよねー。皆さんオシャレして、豪華な食事を優雅に楽しんだんだろうなー。今回のこの展示でも、レプリカの食堂車でフレンチのミシュランシェフの豪華コース料理を楽しむ、というのが目玉の一つ(おそらく一番儲けがでる企画!)だったのですが、コロナ禍で中止に!残念〜!

 

#4 Changi Chapel & Museum

Changi Chapel and Museum

入館料大人8ドル、提携インター校生徒無料

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美しいエントランス

大規模な改修を経て今年5月にリニューアルオープンしたばかりのチャンギ博物館。チャンギ空港の近く、シンガポール刑務所のすぐ横にあります。1942〜1945年の日本占領下に、その刑務所に収容されていた戦争捕虜・民間捕虜とその家族について、写真や絵画、手紙、当時の品々、証言などが展示されています。

 

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シンガポールの暗黒時代を語る博物館ですが、まるで最先端のアートが展示されている美術館のような美しい外観でした。

 

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連合軍兵、主にイギリス人とアメリカ人が収容されていたそうです。展示されているたくさんの写真や証言、品々によって当時の悲惨で過酷な生活の様子が伺えます。

 

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食糧も物資も不足する中で、捕虜たちは少しでも気持ちを強く持って希望を繋ごうと、わずかな自由時間に絵を描いたり音楽や演劇などを楽しみ気を紛らわせていたそうです。アートの力。

 

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そして信仰の力。このチャペルは捕虜たちの手によって建築されたそうです。

 

日本人としては重く苦しい気持ちにならざるを得ない博物館ではありますが、当時の人々の心を救ったアートやチャペルについての言及があることで、私の心も少し救われた気持ちになりました。

 

#5 National Museum of Singapore

National Museum of Singapore

入館料大人15ドル、提携インター校生徒無料

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シンガポール国立博物館

シンガポールで一番古いミュージアム。1849年に図書館として始まり、名称や場所の変更がいろいろあった後、1887年から現在の場所でNational Museum of Singaporeとなったそうです。この建物そのものが美術品のよう!

 

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シンガポールの歴史と文化を紹介する常設展。どうも生活雑貨が気になるワタクシ。。。

日本の占領時「SYONAN-TO (昭南島)」と呼ばれていたシンガポール。日本軍がマレー半島から上陸してきた時には、なんと自転車が使われたという。。。

 

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今回楽しみにしていたのはコレ、ウィリアム・ファーカーコレクション。イギリス植民地となったシンガポール最初の駐在員、ウィリアム・ファーカーはナチュラリストでもあったそうで、地域の動植物を調べて水彩画を描かせコレクションしていたそう。19世紀に描かれた水彩画の鮮やかな色とディテールにうっとり。。。

 

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チームLABOのインスタレーション、他特別展も

Story of Forest はチームLABOの常設インスタレーション。螺旋状のスロープを降りながら東南アジア地域の森や動物の様子が3Dアニメーションで映し出されていくのが楽しめます。次々と現れる動植物たちは、ファーカーコレクションからインスピレーションを得てデジタルで描かれたんだって!19世紀から21世紀へのつながり!

この夏の特別展は:

Home Truly 独立してからその歴史50年余という若い国、シンガポールのこれまでの軌跡と文化の紹介。展示のあちこちで質問に答えながら進んでいくインタラクティブな展示で、子ども達も楽しそうだった。

Picture the Pandemic COVIT-19パンデミックに見舞われた人々の様子、対策、生活などの写真展。何十年も後になって、貴重な資料になるんだろうな。SARSが起きたときの様子も。

 

まだまだたくさんの展示があり、じっくり見るには半日では足りません。また再訪しなくてはー!その価値あり、です。

 

おっと、まだ5カ所しか行っていないのに、ずいぶん長い記録になってしまったので、一旦終わります。まだまだ続くよー(予定w)!

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IBDP(長男が)修了しました

2017年4月にシンガポールに移り、インターナショナルスクールに入ってIBカリキュラムで学び始めた長男が、高校最後の2年間にあたるディプロマプログラム(DP)を無事修了しました。DPは、これまでの学びの集大成を最大限で出力していく2年間。気も抜けないし手も抜けない、かなりのハイペースで長ーいマラソンを走るような感覚じゃないかと思いました。特に最後の数ヶ月は、次々にくる課題の提出期限、同時にやらなければならない授業の課題やテスト、DP最終試験の模擬テストと本番に向けての準備、さらに、この9月の大学入学を目指した長男は入学試験の準備や面接まで重なって、そのプレッシャーとストレスは相当なものでした。今回は、その数ヶ月が実際どんなものだったか、親として学んだこと、感じたことなどをご紹介したいと思います。

 

スケジュール 

(課題提出期限などは、地域や学校によっても異なるそうです。あくまで長男の経験として、参考程度にご覧ください)

まずはざっとカレンダーでみると、

2020年8月 最終学年(Grade12)スタート

2020年9月

2020年10月 1期終了、predicted grades1 (見込み点発表)

2020年11月 

2020年12月 2期終了、predicted grades2、EE提出

2021年1月

2021年2月  模擬試験、TOK提出

2021年3月  3期終了、predicted grades3

2021年4月 CAS提出

2021年5月 最終試験、インター校卒業

2021年6月

2021年7月 最終スコア発表

 

IBDPでもそうじゃなくても、日本でも海外でも、大学受験は同じように大変ですよね。日本の一般的な受験と比べてIBが独特だと思うのは、最終試験のタイミングです。シンガポールのインター校は基本的に年度が8月に始まって6月に終了、IBDPの最終試験は今年は4月末から5月にかけて行われました。試験が終わるとすぐに卒業式です(他の学年はまだ授業があり、6月中旬に年度末)。そして、その試験結果がわかるのは7月初旬。なので、高校を卒業する時点で、最終試験の結果はわかっていないのです!大学入学の合否は、最終スコアによって最終決定となることがほとんどなので、晴れて高校卒業、となっても進学先は決まっておらずなんとなく落ち着かない、宙ぶらりんな感じがします。

 

高校卒業とDPの関係

私もあいまいな理解しかしていなかったんですが、高校を卒業することと、IBDPの資格を取得することは「別もの」です。IBスクールに通っていたとしても、高校まで全ての課程を終えたことでもらえるのは高校課程修了証書、まあ普通の卒業証書ですね。その上で、最後の2年間でDPコースの全ての課題を修了し、最終試験で合格基準点以上を取った場合、IB資格、つまり「国際的に認められている大学入学資格」が取得できます。大学入学資格、と言っても、それで自動的に大学に入れるわけではないので、「大学受験資格」と言い換えた方がいいんじゃないかーと思ってしまいます。

 

というわけで、卒業イコールIB資格、ではないんですね。DPコースは要求されるレベルがかなり高いため、DPコースについていくのはちょっと難しいとか、IB資格は必要ない、というケースもでてきます。また、最終試験は英語で受けることになるので、英語ネイティブでない生徒にとっては、言語のハンデもあります。そのため、IBカリキュラムの学校でも最後の2年間は「DPコース」と「ハイスクールディプロマ(高校課程修了)コース」に分かれていたりします(学校によっても違うと思います)。結局のところその違いは、大学進学の際にIBスコアを利用できるかできないか、ということかなあと思います。

 

Predicted grades (見込み点)

卒業時にも最終スコアがわからないため、最終年には年間を通してPredicted grades, 見込み点というのが出されます。これは、在籍している学校の先生がそれまでの成績や取り組みの姿勢を考慮して「この生徒は最終試験でこれくらいの点数をとるだろう」と「見込んで」出すスコアです。長男の学校では各期末の成績発表と同時に、10月、12月、3月と3回見込み点が出され、生徒たちは受験する大学の出願時期に合わせて最新の見込み点を出願書類と共に提出します。大学側は、見込み点で審査の上「条件付き合格」を出して、最終スコアが出た時点で合格確定、となります。そのため、最終スコアはもちろんのこと、見込み点も大事な要素で、生徒たちは年間を通して気が抜けないのです。

 

世界を見ると、国や地域で出願の時期はだいたい決まっているようですが、日本は大学によってかなりバラバラなので、出願準備の時期に注意する必要があります。9月入学の場合早ければ前年秋に出願が始まる大学もあれば、6月まで出願を受け付ける大学もあるようです。長男の場合、最初の見込み点(10月)を使っての出願から始めたので、道のりが長かった!そして、2回目3回目、そして最終試験に向けて、スコアが下がらないように、なんなら上げていかなくては、というプレッシャーも相当あったようです。

 

大学入試

IB資格を受験条件として認めている大学は、さらにそれぞれの受験資格基準を設けていて、IB資格があればOKとする学校もあれば、IBスコア〜点以上、と打ち出している学校もあります。その上で、書類審査、面接、小論文などをして合否が決定されます。

5月頃最終試験、6月頃卒業の場合、その年の9月の入学を目指して国内外の大学を受験するパターンと、翌年4月の国内の大学入学を目指して帰国、予備校などで受験準備をするパターンが主に考えられます。長男は9月入学を希望したので、最終試験が迫ってくるDPコース終盤に、期末のテストや課題のレポート提出に加えて大学受験のための書類準備や面接などが重なり、プレッシャーは更に倍増!となってしまいました。

 

そんなこんなでストレスが重なり、長男は秋ごろからすっかり無口の暗い顔に。ご飯の時以外は部屋にこもりきり。家族で「大丈夫かな〜生きてるかな〜」とヒソヒソと心配していました。真面目にコツコツ勉強するタイプだし成績も悪くなかったのに、全く自信がない!全滅するかも。。。というような本人としては最悪のシナリオが頭から離れなかったようでした。それでもなんとか最後の試験を終え、ホッと一息。今現在は高校は無事修了し卒業、最終スコア待ちの状態で、本人はまだ「不合格だったらどうしよう」という最悪シナリオは捨てられていないようですがw、それでも笑顔やジョークが見られるようになり、親としてもホッとしているところです。来星してから一度も塾や家庭教師のお世話にならず、IBDPを無事修了した経験は、長男を自立性・自律性のある学習者として成長させてくれました。今後も、Lifetime learner、生涯学び続ける学習者として歩みを進めていって欲しいと思います。

 

本人の感想

「しんどい」「キツい」「もうだめだ」「ゲロはきそう」。。。最後の数ヶ月はこんなネガティブワードしか口から出てこなかった長男ですが、終わってみての感想を聞くと、「DP1年目からもっとちゃんと勉強しておけばよかった」

だそうです。私から見たら、1年目もコツコツやっていたと思うんですが、「もっと」やっていたら最後にこんなにやらなくて済んだはず、と思うようです。学びにゴールはない、ということでしょうか。 

 

親としてもやってみたからわかったこと多し

IBは、「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より 良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富 んだ若者の育成」を目的として掲げています。私はこの理念に感銘を受け、IB教育について学んだりしていましたが、実際のカリキュラムは正直言って複雑ですんなりと理解するのは難しい!と感じていました。実際に子供たちがIB校で学ぶ機会を得て、実践としてやっと理解できるようになったことがたくさんあります。DPについては特にそうで、保護者への説明会に参加して仕組みを聞いてもピンとこなかったものが、実際やってみて、なるほどーそういうことかー!ということが山ほどありました。今回その一部をご紹介してみましたが、もしかしてあんまりピンとこない?!もしかしてかえって混乱した?! だとしたらスミマセン! これからDPに進むお子さんがいるご家庭などで、万が一、少しでも、参考になれば嬉しいです笑

 

この他にも、EE、TOK、CASといったIBDP独特の課題などなど、面白いなーと思うことはいろいろありますし、長男に続いて今年から長女のDPコースが始まったり、次女がMYP最終年、次男はPYP卒業しMYPへ、など、私自身もまだまだ経験すること学ぶことがたくさんあります!私なりの新しい発見を、少しずつシェアしていければいいなと思っています。

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’Student Agency’ ってなーんだ?

'Student Agency' というコトバ
 
Student もAgencyも、一つ一つは見慣れているし、使ったことのある単語ですよね?でも、'Student Agency' というフレーズになると、どういう意味になると思いますか?
 
英語を勉強していると、難しい単語は辞書を引けば意味がわかるけど、このように易しい単語の組み合わせが、実はどんな意味となるのかを知ることの方が、かえって難しいなあと感じることがありませんか?私にとって、今の学校で働き始めてから出会ったこのフレーズが、その一つでした。知らない単語、言葉の意味を「コンテクスト、文脈から知る、学ぶ」というのは、ワールドピースゲームでも大切にしていますが、この'Student Agency'は、私がスタッフミーティングなどで聞きながら、まさに文脈から学んだ言葉です。
 
日本語に訳すと、「生徒の自立(した学び)」となるでしょうか。ミーティングでは、
Student Agency をうながそう、
Student Agency を大切にするために何をするべきか、
といったトピックで頻繁に話し合いがなされたり、実行例などが紹介されたりしています。
 
また、これが "Ownership of learning"という言葉に置き換わることもあります。こちらは「学びの主導権」という感じでしょうか。どちらのフレーズも、先生が主導権を持ってどう学ぶかを決め、指示してやらせるのではない、生徒自身が「学びたい」という気持ちを持ち、どう学ぶかを自ら主体的に考えて学びを進めていく、先生はあくまでそのサポート役である、という考え方です。
 
では、このほど実践された”Empowered learning spaces”、小学4年生のクラスでの取り組みをご紹介します。生徒たちがまさに'Student Agency'を持って教室のあり方を考え、効果的な学びの環境を作った例です。
 
教室の様子(小学生)
 
まず、元々の環境が日本の一般的な教室とは大きく異なることはお伝えしなくてはなりません。
1クラスの人数は最大24名。一人一人にノートパソコンが貸し出される。数人で囲める低めのテーブルがいくつか点在、人数分の椅子。席は決まっていないことが多く、好きな椅子に座ったり、課題ごとに席替えをしたり。授業内容によってはカーペットに座ったり寝転んだりして本を読んだり、歩き回るなど動きが自由。先生もクラスのあちこちに動いてクラスをリード。きちんと整列した机で、座る姿勢まで指導されて動きも限定的、というスタイルとはかなり違います。
 
自分たちで教室をデザインする
 
元々そんな環境だけれども、今回4年生が取り組んだのは「もっと効果的に学べる環境を作ろう!」ここでポイントなのは、先生が考えて生徒のために放課後や休み中に行う模様替えではなく、生徒が主導権を持って、学びの環境をデザインしていることです。
 
まず、みんなで教室内で学ぶ時には、どんなことをするかを考えます。ここでは主に、
 
1)リサーチ
2)コラボレーション(グループワークやディスカッションなど)
3)クリエイティビティ(創作)
4)マインドフル (集中してやる個々の作業)
 
の4つのキーワードがあげられ、それぞれに適しているのはどんな環境か、話し合われました。どんな場所なのか、大きさはどれくらいか、何が必要か、どんな配置にするのが良いか。。。これらは全て生徒たちのディスカッションで決められていきます。
 
そして、それを実際に教室内に実現!まず全ての机、椅子、本棚や教材を廊下に運び出し、それぞれのキーワードに沿って、教室内にコーナーが設けられ、家具や教材を並べていきます。
 
写真を取れなかったので、実際の様子をお見せできないのですが、どんな感じか、ぜひ想像してみてください!
 
1)リサーチコーナー
本棚と本、パソコン、机、イス
落ち着いた雰囲気
 
2)コラボレーションコーナー
カーペットにクッション、ホワイトボード、マーカーなど、
カラフルで楽しそう
 
3)創作コーナー
カラーマーカーや工作用具、机、イス、絵本や図鑑
カラフルで楽しそう
 
4)マインドフルコーナー
壁向きに置かれた1人か2人分だけの机とイスの後ろに、パーテーションのようにダンボールを立てて仕切る ちょっとした隠れ場
 
そして生徒たちは、自分たち自身で考え、作り上げた環境の中で、必要な学びの形に応じて各コーナーを選んだり変えたりしながら過ごしていくのです。このクラスでは、自分たちで教室を作った!という事実だけで生徒たちは学びに対して積極的になり、集中してそれぞれの作業や課題を進めていっているそうです。ダンボールパーテーションの内側では、無言で読書に没頭している生徒がいたり。素敵ですね!私が面白いなーと思ったのは、学びの形の中に「先生が教える」という場面がないことです!ww
 
この模様替え、特にお金をかけてやったことではありません。新しく導入したのは、多分ダンボールくらい?日本の小学校でこれをいきなり実践、は難しいかもしれませんが、何か一部分取り入れるとか、生徒たちと学び環境について考えてみるなど、できることもあるのではないかな、と思いました。ポイントは、「模様替え」をすることではなく、自分たちの学びの環境をどのように作ったらいいのかという点について、生徒たち自らが `Student Agency' を持って取り組んだこと。
 
皆さんの周りでは、’Student Agency'、どんな場面で発揮されていますか?いませんか?
 
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小3小5の探究授業

うちの学校は2学期制。1学期はターム1ターム2に分かれており、その間に1週間半ほどの短いお休みが入ります。8月から始まった新学期はもうすぐターム1が終わり、10月第2週目が秋休み。そのため、ターム1の終わりに向けて、生徒たちはこれまでのまとめのエッセイを書いたり、テストを受けたりなど、忙しくなってきています。学校でできなかったところは宿題になるので、自然と家でもPCに向かって課題に取り組んでいる時間が長い!(そして私は4人分の宿題サポートがツライ!涙)今回は、面白いなーと思って見ている、小3次男と小5次女の探求授業のまとめの様子についてお伝えします。

 

故翁長雄志知事についてリサーチした次男

小3の探求授業のテーマは「権利と義務」。権利ってなんだ?身近にある権利は?権利と義務の関係は?などなど色々な問いが出てきます。宿題で「人々が持っている権利を二つ選んで、その権利が自分の母国でどのように守られているか、お家の人や母国にいる人にインタビューしてみよう。」というのもありました。

 

そしてこのテーマのまとめは、「母国で人々の権利について何か変化をもたらした人物を選んで、リサーチを行い、プレゼンテーションする」というもの。そのプレゼンは、自分がその人になったつもりで、衣装にも工夫をして「なりきりプレゼン」をするのです。面白い!

 

次男は最初、うちで学習伝記漫画を読み倒していた「杉原千畝」をやりたい、と選んでいたのですが、どうやらお友達とカブってしまったらしく、変更することに。色々リサーチして悩んだ末に、残念ながら先月亡くなった故翁長雄志沖縄県知事にすることになりました。どんなことをやった人か、のリサーチとは別に、その人になりきらなくちゃならないので「女の人はムリ」とか、「この人の格好をするのは恥ずかしいからイヤ」とか、なかなかめんどくさい選定でした(笑)

 

リサーチは、オンラインで子ども向けの新聞やニュースサイトに出ている翁長知事の記事を読むことが中心。全てのことがわかるわけではないけど、彼なりの理解は進んだ様子。私は、以前読んだ「日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか」(矢部宏治著)の冒頭にある「つまり米軍機は、沖縄という同じ島のなかで、アメリカ人の家の上は危ないから飛ばないけれども、日本人の家の上は平気で低空飛行する」という一節を紹介して説明。アメリカの人の命や安全は守られているのに、日本の人は守られないなんてフェアじゃないね、ということも感じたようでした。リサーチした内容を「私の名前は翁長雄志です。。」から始まるスピーチ原稿にまとめ、暗記をして、学年のみんなと招待された保護者に向けて発表、となります。次男はかりゆしウェアのつもりのアロハシャツで登場の予定。。。!

 

小5次女のテーマは「移民」

「人類の歴史は移民の歴史」というセントラルアイデアの元、移民について探究した次女たち。このユニットが始まる前、5年生の先生が「お願いがあります」と中学部にやってきました。「移民についてのユニットが始まるので、5年生を小グループに分けて中学の授業に15分くらい参加させてほしい、何も準備したり対応したりする必要はなく、部屋の端っこに座らせて、ずっと放置しておいてもいいし、何か雑用を言いつけてもいいから」とのこと。そう、これは「ミニ移民体験」なのです。当日、5年生たちは何の説明もないまま、ただ「グループに分かれて行ってきて」とだけ言われて中学部へ。慣れない場所であまり知らない先生と生徒が居る教室におずおずと入ってきた5年生に、中学の先生たちは(半分面白がって)雑用を言いつけたり、わざと英語でもない言語で指示を出したり、冷たい床の上に座らせて放置したりしていました。そして先生たちの思惑通り、5年生たちの感想は「何だったのあれ??ひどいよね!訳のわからない言葉で話しかけてきたし!ほっとかれて何したらいいかわかんないし!意味のない雑用とかやらされてホントやだった!ひどい!」などなど。実体験を持って「移民」「難民」の立場をしっかりと感じたようでした。

 

次女がただ今取り組んでいるまとめは、移民について自分で問いを立て、その問いについてのキーワードを3つ出し、それらについてそれぞれリサーチしてサマリーを作る、というもの。次女が立てた問いは「今、日本には難民がいるのか?」。キーワードは1)難民の数 2)日本に難民が少ない理由 3)難民へのサポート、の3つ。それぞれについて、主にWebサイトでのリサーチをしていますが、自分のサマリーに入れる情報は、その出典を明らかにしなければいけないこと、信用できるサイトであるかどうかも確認しなければならないこと、なども学んでいきます。

次女のリサーチによると、日本在住の難民についてわかったことはこんな感じ:

*2017年に日本で難民の認定を受けたのはたったの20人。難民申請者の数は過去最多の約2万人。

*難民申請者の国籍は、フィリピン、ベトナム、スリランカ、インドネシアなどアジア諸国を中心に82カ国に渡る。

*世界では2016年時点で難民の数は6560万人もいる。

*日本での難民申請のためには、提出書類を日本語で書かなくてはならない!

 

海外から逃げてくる難民に「日本語で正確に書類を書いて提出せよ」なんて、その時点で受け入れる気ゼロだよねー!日本政府なにやってんのー?!と次女と盛り上がってしまった。さらに、たとえ難民認定されたとしても、言葉の壁や就労の問題、日本で生まれた子ども達の国籍の問題などなど、彼らが直面する厳しい現実についても、色々な記事を読みました。次女にとって、今まではその存在を意識することもなかった「難民」がグッと身近になった探究授業となりました。

 

子ども達と一緒に私も色々学んだ探究授業。私もそうだけど、もちろん全てがわかったわけじゃなく、きっと子ども達の中にも色々な「なんで??」がもやもやしてるんじゃないかな。。。なんで沖縄に米軍基地が集まっているの?どうして移転に反対する人と賛成する人がいるの?どうしてもっと難民をたくさん認定してあげないの?。。。彼らには、そんな疑問を抱えていってほしい。世の中のあり方を「そういうものだから」とか「仕方ないよね」とか言って終わらせず、「おかしいんじゃないかな?」と思う目線を持ってほしい。疑問を持って、それを提示して、議論して、行動する、そんな力が世界を変えていく原動力だと思うから。探究授業って、そんな力の芽が出るきっかけに、なるんじゃないかな。

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